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第9 - 歴史上より天台判釈を批判す

天台智者大師は仏陀一代の説教を歴史上より見て、以下の如くに次第類別した。これを天台の五時教と云って居る。

 

以上説法の時間を通じて計算すると、五十年となる。

然るに巴理(パーリ)語、梵語、及び西蔵語に伝うる釈尊の正伝によれば、釈尊は三十五歳に成道して八十歳で入滅せられたのであるから、仏説法の年代は四十五年間である。

かくの如く大体の時間に相異があるから、まづ大体において天台の五十年説が成立たないのである。

 

また天台は歴史的事実として前記の如く劃然(かくぜん)と時代を分(わか)って、その各時代に各特異なる経を説いたと明白に挙げている。これが果して歴史上の事実であろうか。

天台はこれが事実であった証拠として、乳、酪、生酥(しょうそ)、熟酥(じゅくそ)、醍醐の五味製出の順序を以て五時に配し、また日出でて高山を照らすなどの喩(たとえ)を以て、五時の順序を定めていられる。

けれどもこれは一会説法中の大衆各自の了解の先後に関する一譬喩(ひゆ)であって、釈尊が自ら自家の説法の時代を区劃(くかく)したものではない。

 

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