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第18 - 日本各宗の無根拠

以上論述した如く、天台の教相判釈は、歴史上より見ても、また原語の研究上より見ても、また教理の上より見ても、何(いず)れの点からもその根拠のない事は明瞭になったと思う。

 

かくの如き根拠なき空想の判釈に基因する日本仏教各宗各派の判釈も、その根拠なきことは云うまでもない。

そうしてかかる空想無根の上に立った各宗各派が互(たがい)にその長を争うが如きは、愚昧と云うより寧(むし)ろ滑稽の極みである。

 

否(い)な滑稽と云って軽視することが出来ない。思えば仏教の神聖を汚涜することとなっている。

それは一仏一心の金口より出でたる仏説なる一切蔵経中の各経典は、黄金棒を細断したる各片の如く、何(いず)れも同じ黄金であるように、各経みな仏心顕現の金言であると如来が証説せられた。その同一黄金の仏説に高下を説くは、仏意に背く神聖冒涜の罪を敢(あえ)てしたものとなるのである。

 

ただそれのみではない。無知無垢の人々等に宗派心を増長せしめて、徒(いたず)らに諍論(じょうろん)闘争を敢(あえ)てせしめ以て世の平和を破るに至らしめることもあるから、実に恐るべき罪悪の根拠を築きつつあるものと云わねばならぬ。

 

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