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第102 - 入菩薩行

うるわしや

虚空(こくう)に白蓮(びゃくれん)咲き匂う ヒマラヤ雪のみねみねは

ふもとの苑やルンヴィニーの 無憂の花のさくもとに

天上天下独尊の 衆生自立の性の声

虚空を破るするどさに 無明の夢は破れたる

 

うるわしや

辺際(はて)も限りもなき原の アリヤ野原の榕樹(ようじゅ)下(げ)に

端然(たんぜん)坐せる悉達多(シッダッタ) 草間に棲める蟲々(むしむし)の

互いに呑みつ喰らいつつ 争いくるしむいたずらを

救う方便(てだて)を思わるる 菩薩の行を我学ぶ

 

うるわしや

青蓮(せいれん)白蓮(びゃくれん)紅蓮(こうれん)の 咲きみだれたる池の辺に

太子と共に貴公子は 花見がてらの弓あそび

提婆(だいば)の放つ矢に落つる 雁(かり)を捕えし悉達多(シッダッタ)

矢を抜き雁を放ちたる 慈悲の心に我学ぶ

 

うるわしや

花の顔色蓮の足 ありや貴族の妻択ぶ

例に習わず位地種族 いかんを問わず妹子(いもこ)等の

徳や技芸のあるなしを 主として配を求めたる

菩薩の妻娶(と)る真実の 心の程を我学ぶ

 

うるわしや

ヒマラヤ山の長雨(ながあめ)に ローヒニ河の水高く

堤防(つつみ)破れて村里の 家はながさるその難を

救わんためにシッダルタ 自ら土木の工事して

民の水難救わるる 菩薩の行を我学ぶ

 

うるわしや

カヴィラワスツの花の春 人は花にと酔い狂う

中に太子は病人や 老人ながめて苦を偲(しの)び

死人を見ては生死(しょうじ)海 浮沈の苦しみある毎に

さめて衆生の苦を救う こころ起すに我学ぶ

 

うるわしや

卯月(うづき)なかばのヒマラヤの 空を照せる月たかし

太子おんとし二十九の 今こそ生死の絆繋(きずな)断つ

時は来にけれいざさらば 菩提の道に生命(いのち)をも

惜(おし)まずすすむ勇断の こころおこすに我学ぶ

 

うるわしや

ネーランジャナの河岸(かわぎし)の 苦行林中六年の

苦行に骨身は枯木なる 身の苦行より心行の

徳の中道修めよと 河に洗浴(みそぎ)し善賢姫(スバハダー)の

乳糜(にゅうび)を受けし心身の 相応行を我学ぶ

 

うるわしや

菩薩本生のヒマラヤは 潤おす布施や高潔の

戒行しるくあらわれて 寒熱の苦をも厭(いと)わずに

猛獣(けもの)の叫びも忍びつつ 徳に進みつ泰然と

何にも動かず慧光にて 虚空てらすに我学ぶ

 

うるわしや

虚空せましと咲きほこる 妙白蓮(びゃくれん)のヒマラヤは

宇宙宏壮(こうそう)の真荘厳(しょうごん) それにも勝さる本生の

六波羅蜜の実行に 示したまえるかずかずの

徳荘厳や真美なる 菩薩の行を我学ぶ

 

南無釈迦牟尼仏陀耶 [十返]

 

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